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奥深き貨物の世界 国内唯一の「貨物鉄道博物館」 

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グリーンクリエイティブいなべ
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貨物鉄道博物館

三重県いなべ市大安町、三岐鉄道三岐線丹生川駅に隣接する「貨物鉄道博物館」。
鉄道による貨物輸送開始(1873年)130周年を迎えるのを記念し、2003年に開館した。
全国の鉄道事業者や企業・個人からの寄贈や貸与で貴重な車輌がそろい、全国の鉄道ファンを魅了する。
2023年には、開館20周年に国内最古級の貨車「旧関西鉄道鉄製有蓋貨車」の復元を目指すクラウドファンディングを実施し、2025年に復元。
貨物鉄道博物館開館日には北勢線阿下喜駅と三岐線丹生川駅間を無料シャトルバスが運行しており、いなべ市内で鉄道の魅力を味わう旅を堪能できる。貨物鉄道博物館に訪れ、その魅力に触れたい。



いなべの経済発展に寄与してきた貨物鉄道

宇賀川橋梁を渡る101 系電⾞
宇賀川橋梁を渡る101 系電⾞ (提供:南野哲志)

いなべといえば黄色い電車。田舎町に映えるかわいらしい客車は、このまちを代表するシンボルの1つだ。

セメント鉱⼭の藤原岳をバックに⾛るED45形重連牽引のセメント列⾞ (提供:貨物鉄道博物館)

一方で、貨物列車の存在も忘れてはならない。さまざまな背景はあれど、このまちの経済発展に寄与してきた鉄道である。

三岐鉄道株式會社 富⽥東藤原間開通記念繪端書「多志⽥拱橋」 所蔵:南野哲志

1927年(昭和2年)、鈴鹿山脈の北端にある藤原岳が、セメントの原料である石灰石でできていることに目を付けた2つの会社が、採掘したセメントを、富田や四日市、関ヶ原(岐阜県)に運ぶため、鉄道建設を計画した。
結果、競合する2社の敷設は一本化され、1928年(昭和3年)に三重県と岐阜県を結ぶ鉄道として「三岐鉄道株式会社」を設立。
翌年から建設工事が開始され、1931年(昭和6年)7月23日に営業運転が開始された。
開業当初より貨物営業と旅客営業の両立を狙ってきた三岐鉄道。
現在、セメント輸送をおこなう私鉄は国内唯一である。

国内唯一の貨物鉄道博物館

いなべ市大安町の三岐鉄道三岐線 丹生川駅前の貨物鉄道博物館 (提供:貨物鉄道博物館)

三岐鉄道 三岐線 丹生川駅に隣接する「貨物鉄道博物館」は、三岐鉄道利用者や地域のボランティア活動団体により、地域社会における鉄道事業の活性化を目的とし開館した。

開館時の2003年(平成15年)は、日本における鉄道による貨物輸送が、1873年(明治6年)に始まって以来、130周年目だったこともあり、世界で始めて貨物鉄道を専門とする博物館として、記念の意も込められている。

貨物鉄道博物館内には全国の鉄道事業者や企業・個⼈からの寄贈や貸与による貴重な資料がそろう

当時の三岐鉄道は、セメント以外にも、地域の農産品などを貨車に乗せ、各地へ運搬する小口輸送も行っていた。

東武鉄道蒸気機関車B4形39号 (提供:貨物鉄道博物館)

出荷場として使用されていた倉庫が、丹生川駅の横に唯一残っていたこともあり、その場所を再活用する形で、貨物鉄道博物館を創り上げたという。
貨物鉄道博物館の主要な展示物であるさまざまな種類の実物貨車は、全国の鉄道事業者や企業・個人からの寄贈や貸与によるもので、現存する最古級の貴重な車輌がそろう。

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2025.9.1