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奥深き貨物の世界 国内唯一の「貨物鉄道博物館」 

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グリーンクリエイティブいなべ
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貨物鉄道博物館

鉄道文化を後世に残す。貨物鉄道博物館・南野哲志さん

貨物鉄道博物館常務理事の南野哲志さん

博物館の立ち上げ時から携わる南野哲志さんは、運営を担うNPO法人 貨物鉄道博物館で、常務理事を務める。本業である建築の設計や建設模型を制作する傍ら、三岐鉄道に関わるさまざまな歴史を紐解き、鉄道文化を後世に伝えていくための使命を背負い日々活動する。

毎月第1日曜日には多くの見学客が訪れる(提供:貨物鉄道博物館)

毎月1各界の開館日には、親子連れをはじめ、鉄道ファンがこの日を心待ちに、各所より集う。
南野さんをはじめとする運営チームとともに、ボランティアスタッフによる貨車の修繕作業が行われるほか、展示車輌のライトが点灯されたり、運転席に乗車できるなど、当時の生き生きとした鉄道の表情を垣間見ることができる。

20年前、三岐鉄道70周年記念で制作。三岐鉄道開業時に導⼊された、蒸気機関⾞E102+貨⾞ワ1 とガソリンカーキハ1(三岐鉄道N ゲージ模型)。上記作品は、鉄道模型専⾨誌、機芸出版社「鉄道模型趣味」692 号(2002 年1⽉刊)でも掲載。(提供:南野哲志)

南野さんと三岐鉄道の出会いは、必然であった。
父親が三岐鉄道の車輌整備士だったこともあり、自然と鉄道好きの少年に育った南野さん。やがて、沿線の学校へ通い、教室から見える三岐鉄道の列車に魅せられていく。

ある時、「三岐鉄道の全車輌を模型化しよう!」と思い立ち、車輌研究に打ち込むように。模型制作は現在、現存車はじめ過去車をあわせて、なんと100輌を超えるほど。南野さんの「得意」とすることで縁がつながり、今では三岐鉄道をはじめ、鉄道文化を支えるひとりである。

蒸気機関⾞E102製作中(提供:南野哲志)

南野さんの車輌研究は、たとえるならば組み立てられたものを一つひとつていねいに分解していく作業でもある。
車輌の細かなすべてのパーツを分析し、どこでどのように製造されたものなのか、どんな材でできているのかなど、ネジ一つのつくりや繋ぎ目さえも、その背景を紐解いていく。

南野さんは車輌の細かな部分も分析する(提供:貨物鉄道博物館)

貨車のとある部分は、イギリスをはじめヨーロッパを中心に世界各国でつくられてきたということや、センチではなくインチを用いた計測方法であるなど、南野さんが初めて解明したことが数多くあり、ぜひ訪れて話を聞いてみたい。
日本の近代化を支えてきたと言っても過言ではない貨物輸送の歴史が、このまちには現代に至るまでしっかりと残っているのだ。

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2025.9.1