懐かしくて新しい「阿下喜」の町を歩く。Vol.1
いなべ市の中心に位置する阿下喜(あげき)は、かつて宿場町として昭和初期に栄え、約100もの商店が立ち並んでいたという。
そんな面影を色濃く残しながらも、近年この町には新しい風が吹き、世代を超えた人と人とのあたたかいつながりを感じることができる。
ローカル線・三岐鉄道北勢線の終着駅でもある「阿下喜」を降りて、右に真っ直ぐ歩くと、いなべ市役所に隣接する『にぎわいの森』につながるメインストリートが現れる。
坂道を登りながら一歩横の通りに入ると、そこにもまた歴史的情緒ある建屋が並び、かつての喧騒に耳をすませてみたくなる。
正面には藤原岳が佇み、“暮らし” と “自然” が密接にあることを実感する。
坂道を更に進み一歩奥に曲がると、戦前の木造小学校(旧阿下喜小学校)校舎であり、国の登録有形文化財でもある『桐林館(とうりんかん)』が見えてくる。
館内には、当時の教室や校長室を現代に伝えるために復元されており、板張りの廊下や木枠のガラス窓など、木々のあたたかみ溢れる空間になっている。
木造校舎の中で、“静かに”ほっと一息
2017年、いなべ市と地域住民が協力して桐林館を「まちづくりの拠点」としてオープン。
かつて職員室だった場所には、筆談カフェ『桐林館喫茶室』があり、“静かに” お茶や軽食(コッペパンなど)を楽しむことができる。
※「筆談カフェ」とは…
ルールは「音声オフ」。ノートとペンで会話を楽しむ、体験型のカフェ。
おしゃべり禁止のカフェではなく、音声を使わないコミュニケーションを楽しむ空間。
筆談・ジェスチャー・手話…おしゃべりの方法はいろいろ。
手で伝える。目で伝わる。「音がないから、オモシロイ」
あたりまえがなくなるとき、そこには新しい発見がある。
“静かな”桐林館でしか味わえない「音声のない世界」を体験してみて。
オーナーの金子文絵さん(写真上右)は、看護師の資格を持ちながら、「コミュニティナース」として、障がいを持つ人たちと社会とを、さまざまな形でつなげる活動をしている。
その取り組みの一つとして、「アールブリュット(障がいを持つ方の表現・アート)」の展示に力を入れている。
赤、黄、緑にオレンジ。大胆で色鮮やかな貼り絵は、市内に住む作家、山下朔矢さんの作品。
作品に太陽の光が入り込むと、ステンドグラスのよう。
桐林館喫茶室で注文できる昔ながらの瓶に入った珈琲牛乳。
見た目からかどこか懐かしい味わいで、やさしい甘さでほっとする。
珈琲は、津で福祉事業を行う『コーヒーハウスひびうた』さんのものを使用している。
75年続く老舗和菓子屋『松寿園 菓子舗』で旅のおみやげを
桐林館近くの和菓子屋、松寿園(しょうじゅえん)では、季節の和菓子の他、地域の餅米を使った香ばしい「かきもち」などが購入できる。
ちょうど良い甘さの餡子が身体にやさしく染み入る。
創業当初から使っているという、祝い菓子の木枠なども店内に展示されていて、ここでも歴史を感じることができる。
細やかで可愛いらしい絵柄が目を惹く。
お昼ご飯は、地元の人から愛される大衆食堂「カドヤ」がおすすめ
12時になると地元の人たちが一斉に集う食堂『カドヤ』。
出汁の効いたうどん、揚げたての甘いコロッケ、ソースか醤油かを選ぶことができる焼き飯など、昔ながらの定食が食べられる。
定食でよく使うネギや漬物の野菜は、自家栽培しているというこだわりも。
暖簾をくぐるといつもあたたかく迎えてくれる店員さん。ローカルトークにも花が咲く。
ここが地元の人も、地元でない人も、我が家に帰ったような懐かしい感覚になるカドヤ。
胃も心もなんだかあたたかい、で満たされる。そんな食事の時間をたのしんでほしい。
インフォメーション
筆談カフェ『桐林館喫茶室』
住所:三重県いなべ市北勢町阿下喜1980
※予約優先
お電話での対応はできかねますのでご了承ください。
お問い合わせはInstagramのDMまたはメールにてお願いします。
筆談カフェのご予約は公式LINEにて承っております。
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