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店主が作るお米が主役 ”ごはんが進む”気まぐれメニューを味わう 「農業喫茶マロン」 

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グリーンクリエイティブいなべ
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いなべ市藤原町、1977年創業の「農業喫茶マロン」。2代目店主の伊藤彰将さんが育てた「お米」と、”ごはんが進む”気まぐれメニューを味わえる。
ローストビーフ、ガパオライス……訪れる時にどんなメニューがあるかはわからない。それでも予約が絶えないのは、良い土と水で育ったお米が主役だから。
「ずっと食べたい、家族に食べさせたいもんを作る」
農業喫茶マロン店主の人生観に触れ、主役の甘味豊かな自家製米を味わうのはいかがだろうか。

いなべ市藤原町の農業喫茶マロン

2代目店長の伊藤さん(2025年撮影)

いなべ市藤原町で「農業喫茶マロン」を営む伊藤彰将さん。
農業喫茶ーーー聞きなれない言葉だ。
伊藤さんは農家なのか? 喫茶店の経営者なのか?
答えは「どちらも」だ。
伊藤さんは約20haの田畑で米、大麦、小麦を生産している。
一方で、喫茶店を経営。その店で提供される栄養満点、甘味豊かな白ごはんは、自家製の自慢のお米だ。農と食をリンクさせながら、みずからのフィールドを作り出し、精力的に働く伊藤さん。
その生業を「幸せな気持ちでやっている」と話す。

当たり前にあった田畑と父の店

四日市から約30分、名古屋から1時間の農業喫茶マロン(2020年撮影)

伊藤さんは、生まれも育ちも藤原町。
喫茶店や田畑は、父の辰治さんが営んでいた。伊藤さんも子どものころから出入りし、「半分家のような場所」であった。田畑もまた、農作業の手伝いをするなど身近な存在だった。
10代のころは「手伝いをしている姿を友達には見られたくない」という気恥ずかしさもあったが、店や田畑は日々の暮らしの中で空気のように存在していた。

音楽の道を目指した青春時代

伊藤さんは音楽の世界で生きることを目指し、19歳から20歳までの数か月間、アメリカとジャマイカでレコーディングの仕事をした。帰国してからは、いくつもの仕事を掛け持ちし音楽を続けるためにお金を稼ぐ生活を送っていた。

「父のお店や農業には興味がなかった」
夢に向かってただただ走り続ける日々で、家業を継ぐことなど考えたこともなかった。

ただ、仕事関係者や友人らに実家のごはんをふるまうと「お前のところのお米はおいしい」と誰もがいう。当たり前すぎて気付かなかったが、「お米がおいしい」ということに初めて気づいた。これが、家業に目が向いたきっかけのひとつとなった。

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2025.7.16