暮らしから紡ぐ旅のガイド。いなべ暮らしを旅する。

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移ろう季節を、その瞬間に味わう。いなべ市梅林公園・あわいの食事処「きせつ」

written by
かみやかなこ
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かみやかなこ
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食材の良さを引き出し、美しく表現する。

料理長水野さん
料理長の水野里真さん

きせつの料理長を務めるのは水野里真さん。大工の祖父や建築士の父の影響で、家にある木の端材でいつも遊んでおり、祖父母が作った野菜を使って料理やものづくりをすることが好きだった。

進路では料理か芸術か迷った末に栄養士の道へ。病院や食品会社、薬局などで働き、次第に「食べ物で表現したい」と30歳のときに飲食業へ。その頃、客として訪れた上木食堂の野菜のおいしさ、コンセプトに衝撃を受け、松風カンパニーに就職した。キッチン業務を経て翌年から上木食堂店長になり新上木食堂の立ち上げにも関わった。

「手仕事が好き」という幼い頃からの根本は変わらず、趣味の刺繍では個展を開いたことも。その手先の器用さと美的センスが「きせつ」の料理に表われる。

二十四節気のちらし寿司
季節の節目、二十四節気には、特別なちらし寿司を提供する。(提供:きせつ)

二十四節気に販売するちらし寿司を見れば納得するだろう。節目節目の季節の野菜で彩るお弁当はまるで一枚の絵画のよう。ぜひその特別な日に訪れ食したい。

がんたち団子
土地のおやつ「がんたち団子」を宿泊者に提供。解釈を変えて季節を楽しめるようなおやき風のおやつに。(提供:きせつ)

きせつで料理長を務めることが決まってからはいなべの季節をどう楽しんでもらうか考え、地元の人に土地の食文化を教わり作ってきた。
梅干し、きゅうりのきゅうちゃん漬け、がんたち団子、ゆずジャム、ゆず味噌……。

「この時期にこれを作る、この時期はこれというのを地元の方に協力して教えていただきました。『がんたち団子』という土地のおやつには『いばらの葉』がついている。どこで手に入るのか訪ね地元の人に聞いて一緒に摘みにいくんです」。

こうして、古くから受けがれる味を引き継ぎ、食事で伝えることとともに、味噌作りや醤油作りなどの体験を通じて伝えていきたいと考えている。
「昔当たり前のようにあった風景が今は特別になっている。これをまた当たり前にしたい」

ここで体験で終わるのではなく、自宅でもその食文化を持ち帰ってもらい「食から季節とともにある生き方」を伝えることを目指している。

あわい暦を楽しむ

店内から見る風景
ソファ席は、大きなガラス窓をはるか遠くに鈴鹿山脈を望む雄大な風景が広がる

夏は爽やかな風が吹く青々とした景色が広がり、秋には紅葉、山に3回雪が降ると里に降りてくる。白い季節を過ぎ去れば、春を喜ぶかのように梅が咲く。

彩がくっきりと感じられる、場所。

「ここにある季節の変化を料理で提供できたら」(寺園さん)

現場のスタッフが感じるその場所の季節を、料理で表現していく。その期間、その瞬間を拾い上げて、提供していく。自然に囲まれているからこそ感じられる変化をしっかりと汲み取っていく。

慌ただしい毎日を過ごす中、ここに足を伸ばして一息つくと、ささやかなときの移ろいにハッとする。

春夏秋冬の四つだけでない、季節。グラデーションのようにじわりと変わりつつ、ふと立ち止まると新しい季節が訪れ、前の季節が過ぎ去ろうとしている。
そんな時に私たちは次の季節への期待と、過ぎ去る季節への切なさを感じる。そのときに別れを告げて次のときを迎え翌年また同じことを繰り返す。そんな一つひとつの節目を大切にできることこそ生きる喜びだということを思い出すだろう。

日頃感じる季節とはまた感触が違うかもしれない。それは「あわい暦」とでも呼ぼうか。
五感をひらき、食を、空気を、温度を味わいたい。

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2026.9.11

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