暮らしから紡ぐ旅のガイド。いなべ暮らしを旅する。

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大切にしたいものに気づく場所「キッチュ エ ビオいなべ」

written by
清田若菜
photo by
清田若菜 / 八木萌子
  • #にぎわいの森
  • #買い物

物質的な世界から、いなべへ

キッチュ エ ビオいなべの店長、生田雅子さんの経歴も非常にユニークだ。
雅子さんもまた、人生の途中で大切にしたいものに気づいた一人。

17歳でアメリカに留学し、イギリスの大学でファッションデザインを学んだ。
帰国後、外資系のファッションブランドでVMD(ビジュアル・マーチャンダイジング)として、東京で活躍。
ファッションウィークに合わせて海外への買い付けに同行し、商品と売り場を一体で考え、全国の店舗に落とし込んでいく華やかな世界にいた。都会で目まぐるしく変わるファッションの「物質的な世界」に身を置いていた雅子さんは、次第に田舎の生活への思いが強くなっていったという。

ちょうどその頃に、浩徳さんと結婚し名古屋へ移住。キッチュ エ ビオでいなべ市での出店の話が上がり、役員たちといなべ市に視察へ来ることに。
初めて訪れた、いなべの地。
名古屋の自宅マンションから遠くに眺めていた山が、いなべに近づくにつれてどんどん大きくなっていく。

山が身近にあるいなべの風景に、雅子さんは惹かれた。
「街から山を眺めていたけど、今度は山から都会を眺めるような生き方をしたい、と思ったんです」

犬や猫と暮らし、自然や食に近い場所で生きる。これまで物質的な社会にいたからこそ、その反対側を経験してみたい。暮らしの中で大切にしたい本質に気づき、いなべの地でキッチュ エ ビオと結びついていった。

長く海外で過ごした雅子さんならではの思いも、キッチュ エ ビオいなべで生かされている。
海外には乳製品や小麦を食べない人も多くいて、いろんなライフスタイルの人に合う商品がたくさんある。
しかし、日本ではまだまだ選択肢が少ないのが現状だ。
キッチュ エ ビオいなべでは、チルドコーナーの中に大豆で作られたハムが自然と陳列されている。
そこには、自身もお肉を食べないという選択をしている雅子さんだからこそ、キッチュ エ ビオでは買い物の幅が広がって欲しいとの思いが込められている。

大切にしたいもの

キッチュ エ ビオいなべの魅力は、陳列された商品以外にもある。

店自慢のランチプレートは、化学調味料に頼らない本物の醤油や塩を使い、いなべ産のお米に厳選された野菜がふんだんに使われている。店で扱う調味料と同じものをランチプレートにも使い、全国から集めたこだわりの味を実際に知ってもらう機会となっている。


月に一度開かれているワインスクールは、コミュニティーづくりの場として開催されている。参加者は、窓の外に広がる「にぎわいの森」の緑に非日常を感じ、ゆったりとした時間を過ごしている。

「うちはお客様とスタッフが話すことが多いんです」と雅子さんが言う通り、「この調味料どう使うの?」「卵不使用のお菓子ある?」などレジや売り場で自然と言葉を交わす姿が見られる。

「最近は、うれしいことに四日市市や鈴鹿市からも調味料を求めてお客さんがいなべまで買いに来てくれる」と、浩徳さんは話す。

食に真剣に向き合う人に商品の良さをじっくりと伝えるキッチュ エ ビオのスタイルは、決して合理的とは言えない。
大量に仕入れ、安く売る店ならもっと近くにもある。
それでも、わざわざいなべまで足を運んでくれる人がいる。
食べることの楽しさや、生産者の思い、自然の中で過ごす時間を大切にする——。
そんな店だからこそ、商品を選ぶ時間は、ただ買い物をするだけの時間ではなくなっていく。

店内で商品を手に取るたびに、「自分は何を身体に入れたいのか」「何を大切にしたいのか」と、自分自身に問いかける。

キッチュ エ ビオいなべは、ただ食べ物を買う場所ではない。

商品との出会いを通して、自分が「何を大切にしたいか」に、きっと気づくことができる場所だ。


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2026.9.30

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