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大切にしたいものに気づく場所「キッチュ エ ビオいなべ」

written by
清田若菜
photo by
清田若菜 / 八木萌子
  • #にぎわいの森
  • #買い物

30店舗ほどあった八百屋が、次々と姿を消していった。
大型スーパーの波が押し寄せた時代、生き残るために生田フードが決断したこと。
自分たちが本当に良いと思った商品を、必要とする人へ届けたい——。
専務取締役の生田浩徳さんとマネージャーの生田雅子さんが大切にしている「本質」が、キッチュ・エビオいなべの店内にも息づいている。

押し寄せる大型スーパーの波 兄弟の挑戦

素材にこだわった調味料、乳・卵不使用のお菓子の数々。
にぎわいの森にある「キッチュ・エビオいなべ」は、見て回るだけで心が弾むフードブティックだ。

キッチュ・エビオの母体となる生田フードのルーツは、愛知県碧南市で浩徳さんの祖母が始めた行商にある。父の代で、肉や魚も取り扱う当時としては珍しい八百屋になった。

若き日の浩徳さんは、レーシングドライバーを夢見たが、資金面で断念。
商売をする家族の姿を間近に見て育ち、兄弟で父の八百屋を手伝うように。

転機は、20代の頃。
父が突然倒れ、兄弟は経営を任されることに。
その頃、碧南市にも大型スーパーが進出し、まちの八百屋が次々と閉店に追い込まれていた。
大手と同じように売っていては生き残れない。
兄弟で議論して出した答えが、「独自路線」を開拓することだった。

「大手が取り扱わないような、地元の商品や価値のあるものを取り扱おう」

価格や規模ではなく、商品の価値で勝負する。
何十年も先を見据えて、舵を切っていった。

全国を飛び回り、自分たちで探す

「当時は、インターネットも携帯電話もないからね。良いお味噌って調べても出てこなかったね」

兄弟が最初に取り組んだのは、自分たちの目と足で商品を探し出すこと。
物産展や展示会に通い、時には生産者のもとを訪ね、直接話を聞いた。
鶏肉なら、餌や飼い方、どんな思いで取り組んでいるかまで生産者に聞く。抗生剤不使用のこだわりの生産者には、熱い思いをぶつけて交渉し、加工してくれる業者を探し、農場から店頭に並ぶまでのルートをゼロから作っていった。気になる醸造蔵があれば、現地まで飛んで行くことも。職人と膝を突き合わせてお酒を酌み交わした。

「職人って無口だと思うでしょ?自分の商品を分かってくれる人には、熱く語ってくれるんですよね」

全国各地をまわって商品を知れば知るほど、自分たちの本当に売りたいものが変わっていったと浩徳さんは話す。

良いものと、売れるものは違う

生産者や職人と関わる中で、浩徳さんの食品への知識も深まっていったという。
「売れるもの」の中には、安くて、添加物を駆使して万人に好まれるような味に調合された大量生産品もある。
一方で、職人が情熱を持って作る「良いもの」には、原価が高くて大量生産できないものが多い事実を目の当たりに。
価値のある良いものを、適正な価格で届けたいという気持ちが次第に強くなっていった。

「もう、大量流通のナショナルブランドにはすっかり興味がなくなってね」と話す浩徳さん

独自のセレクトで選び抜いた商品を並べる個性的なフードブティック「キッチュ エ ビオ」を兄弟でオープンさせた。

実際に生産者から聞いてきた商品への思いをPOPに書き込んで、食に関心の高い人たちに届けることにこだわってきた

「ここに来れば安心して買い物ができる」
兄弟で集めたこだわりの商品を見て、人から人へ、口コミで店の評判は広まっていった。

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2026.9.30

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